性癖博覧会萌茶・作品用

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「押し倒される」 - 真坂

2023/01/21 (Sat) 23:48:57

 身体の下は固くも柔らかくもない、備え付けのベッド。
 そして身体の上には、細くて華奢で、自分に比べたら全然小さな人影。
「……マスターちゃん」
「わ、私、本気なんだからね!!」
 身体の両脇辺りに手をついて影を作る彼女のことを呼べば、斎藤がそれ以上何か言う前に真っ赤な顔をしてそう宣言した。
「斎藤さんは、いつも躱したり茶化したりして有耶無耶にしちゃうけど!でも、私は本当に、本気で、あなたのことが好きなの!」
 半ば自暴自棄とも言えるような勢い任せの告白。しかしキッと吊り上がった眉とは裏腹に、潤んだ蜜色の瞳は羞恥や不安、罪悪感などの様々な感情が入り乱れて、今にも零れ落ちそうで。
「マスター失格かも、しれないけど……でも、自分に嘘は吐きたくないから。ちゃんと、本気にして。そのうえで、駄目なら、斎藤さんが嫌なら、そう言って」
 それでも消えない恋情が、真っ直ぐに斎藤を貫いてきた。
「……はぁ~」
「っ」
 思わず漏れた大きな溜息に、薄い肩がビクリと跳ねるが、彼女の身体が引くことはなかった。それを認めたうえで、斎藤は片手で自分の両目を覆う。
「全く、あんたって子は……」
 確かにこの真っ直ぐな恋情を、親愛に、友愛に、主従愛にすり替え躱して、斎藤は誤魔化して答えを出さなかった。
 それでもその瞳の中の炎は、消えることなく勢いを強めていき。

「―――本当に、素直でいい子だね♡」

 斎藤の思惑通りに、今日この時を迎えた。

「え?」
 ニイィ、と大きく吊り上がった口から発せられた、低く甘ったるい響きの言葉を聞いて、目の前の顔が驚いた猫のようにきょとんとした表情を作る。
 そんな隙を突くまでもなく、あっさりと、反転。
「え、え?」
 ベッドを背に横たわった少女は、きょときょとと忙しなく視線を動かしながら、結局自分の上に覆い被さる男を見上げるしかない。
 罠にかかった獲物を見つめて、斎藤は満足そうに、うっそりと細めた目を晒して笑みを深める。
「僕が好きで、押し倒してきたのは、マスターちゃんの方だもんね?」
「え、そ、そうですけど……あれ?」
「そこまでされちゃサーヴァントとして……否、男として、引くわけにはいかんよなぁ?」
「え、待って待って、なんか考えてたパターンのどれともちがっ……ぅんんっ!?」

 目を白黒させる少女を余所に、物の見事に大義名分を用意させた男は、もう辛抱たまらんと大きく口を開けて噛みついた。

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