ロビぐだ♀萌茶・作品用 1542


「笑っていて」

1:アナコンダ :

2019/01/12 (Sat) 23:18:52

※現パロです

 ずび、すびび、ぶひ、と聞くに堪えない音が隣から聞こえてくる。ちらりと横を見ると、目を真っ赤にした立香が、泣くのを我慢してとんでもない音を出していた。つーか、我慢出来てねぇし。ぼったぼた涙出て、いや鼻水まで出て、とんでもない量の水が顔から出ている。これを予期してか、映画の最初からティッシュを膝に置いていたが、どうやらぺらぺらの紙ではぬぐい切れないぐらいの量だったらしい。
 ふぅ、と息を吐き立ち上がると、「どめどごうが?」と物凄い鼻声で聞かれたので首を横に振る。これ前見たことあるしな。
 濡らして、レンジで温めたタオルを持っていくと、立香は一瞬びっくりしたように目を開き、ありがとう、と少し顔を緩める。そして一時停止していた映画をまた再開する。

 映画はアレだ。船が沈没するやつ。そんで、男が死ぬやつ。何度か見たはずなのに、まるで初見のように立香は泣く。
 テレビの画面で美女が老婆になり、音楽が流れようやく映画が終わる。立香に渡したタオルは冷えていたが、顔を拭いて少しすっきりしたのか、さっきよりはまともな顔だった。

「だめ、何回観ても泣いちゃう」
 自分でも分かっているのか、ちーん、と鼻を噛みながら立香は呟く。
「あの楽団のとことか、あと、子供、の、やつとか、それと、おじいさん、おばあさんのとか…」
 言っていて思い出したのかまたぼろりと涙が出る。へいへいと言いながら、それを指で掬ってやった。
「ロビンは、泣かないね」
「オレも見たことありますし、これ」
「ロビンが、映画で泣いたの見たことない、かも」
 言われてみると、そうかもしれない。記憶を手繰り寄せたが、横で立香がいつもひんひん泣いている様子しか思い出せなかった。
「…なんか、悔しい。よし、次はロビンも泣けるような映画を観よう」
 口を尖らせ、子供のようなことを言い出した立香にストップをかける。
「次はなんか笑えるやつにしましょ」
「なんで、泣いてるロビン見たいよ」
 趣旨が変わっている。オレははぁと息を吐いて、立香を見つめる。
 泣き腫らして、目の周りが真っ赤になって、綺麗な琥珀色も少し濁っちまって。声も鼻にかかってるし、枯れちまってるし、なんつーかさぁ。
「…今日はもう、映画はおしまい」
「え?なんでよ」
「立香がオレの上で腰振ってくれたら、オレもいー声で啼くと思いますけど?」
「はぁ!?」
 何言ってんのさスケベ!と立香が顔を真っ赤にさせる。
「え、映画の話してたんじゃん!」
「んー、映画見て泣いてる立香より、オレに抱かれて泣く立香の方が見たい、っつうか」
「ふぁ!?」
 映画で、知らないやつを見て、その生き様や死に様や気持ちに泣いてしまう彼女も、まぁかわいい。でも本音を言えば、その涙がオレのために出されたものであって、その声がオレのせいで掠れたものになっていたほうが、ずっとずっと、可愛い。
 だからガラガラになった立香の喉にそ、と指をあて滑らせる。
 この声が、鈴が鳴るような綺麗な声が、もう出せないくらい掠れて、それでもオレの名を囁くのが好きだ。とろり、蕩けた目で、オレを見上げながら無意識に唇が名前を繰り返すのを聞くのが、好きだ。
 ああそうだな、それにその時、涙は流れていても、彼女の口が、微笑んでいるほうが、好きだ。


「立香、オレとのセックス好きでしょ。泣いてても最後には絶対笑ってくれるから、オレ、たまんなくなるんすよ」


 好きな女の、泣き顔より笑顔の方がいいに決まってるでしょ?と続けながら、彼女の首筋に頭を埋める。Tシャツから出た白い首が、いつもより赤くてオレは嬉しくなる。

「…うう、ロビン」
「なんすか」
「すぐ、えっちなこと言うし、えっちしたがるし、それはどうかと思うんだけど、」
「すんませんね」


「……それを嬉しいって思ってる私が、一番だめだよね…」


 かぁ、と音がしそうな頬を押さえながら、立香は笑う。ほら、絶対こっちの方がいい、とオレも笑うと、そのままぽすりと身を任せてきた。
 映画のエンドロールはもうすぐ終わるが、今日はこのまま、タイトル画面をしばらく流しておこう。


『笑っていて』

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